トレーラーの不安定な挙動 「スネーキング」(別名:蛇ダンス)

高速道路をハイスピードで牽引走行。
トレーラーの牽引は傍から見るよりずっと簡単なので、自分の腕を過信しがちである。
しかし目前に迫った大型トラックを、追越車線から抜き去った直後、
予期せぬことが起こる場合がある。
ハンドルを動かしているつもりはない。確かに直進を保っている。
にも関わらず、クルマは勝手に進路を外れて左右に蛇行する。
ドライバーを襲う横Gと、不可解な現象への恐怖。頭の中が真っ白になり、身体が硬直する。
けん引車とトレーラーが蛇のようにクネる、
「スネーキング」 が起きたのである。

追い越しの際、トレーラー側面にトラックの風圧を受けると、トレーラーがヨーイングを起こすことがある。 ヨーイングは、車両中央の垂直軸を芯にした回転振動で、さながら輪ゴムを通した牛乳キャップのように 反復運動をしようとするが、トレーラーの前端は、 けん引車とトレーラーの連結点(右図赤点)で拘束されているため、 連結点には左右方向の反復力が加わる。
この反復力が、けん引車側にヨーイングを引き起こし、 さらに右図のように、けん引車とトレーラーの進行方向に対する角度が操舵の作用を及ぼすので、 直進安定性が著しく損なわれる。


かなり誇張した図だが、トレーラーのヨーイングにより、 けん引車のヨーイングが誘発されてスネーキングが起こる。

トレーラーの車輪は全長のほぼ中央にあるため、ヨーイングが起こりやすいのは避けられないとしても、その影響がけん引車に及ばなければ、スネーキングにはならず、けん引車の直進安定性が損なわれることはない。そこで経験上、次のことに注意すれば、スネーキングは避けられると思う。

牽引走行中はスピードを控える

速度が高いほど、トレーラーの挙動は大きくなる(車体の受ける空気流速が増すから)。挙動が大きいほど、けん引車の連結部に加わる変位も増すので、けん引車のボディの振れ回りが大きくなり、スネーキングになりやすい。

トレーラーは軽く(荷物はヘッドに積む)

トレーラーの重量が大きいほど、けん引車の連結部に加わる力は大きくなるので、けん引車のボディの振れ回りが強くなり、スネーキングになりやすい。荷物はけん引車に積み、トレーラーは空にすべきである。

けん引車とトレーラーのタイヤ(及びサスペンション)の性能

タイヤの性能(剛性や直進安定性など)が高ければ、スネーキングになりにくい。使用するタイヤの性能、適切な空気圧に注意する。実際にはサスペンションも影響するが、サスペンションの変更は困難なので、バネ要素としてのタイヤに注目する。 (タイヤとスネーキングの関係をめぐる実例